記憶の中の食べもの
子どもの頃、新聞の集金の人が置いていく料理冊子をながめるのが好きでした。
毎月置いていく新しい冊子を開いては「今回はこれがいいな〜」などと心の中で選ぶのです。が、仕事に子育てに忙しい母がそれを作ってくれる事はなく、あくまでも妄想するだけです。今も実家にはその冊子が箱に入って取ってあるのですが、「これ」などと拙い字で写真にマルが付けてあったりします。
その冊子には最初に記者の方の料理コラムがあり、小学校に入って字が読めるようになるとそこにも目を通すようになりました。その中で私が一番印象に残っている料理コラムが「とんかつのミルクスープ」です。読んでから20年以上たった今でも思い出せるので、当時よっぽど強烈だったのでしょう。
「シロウ君」という記者が新婚時代に奥さんの「レイコさん」を連れて自分のお姉さんの家に遊びに行った思い出のお話。そこでお姉さんが作ってくれるのが「とんかつのミルクスープ」なのです。揚げたてのとんかつを食べやすく切って、温かいミルクスープでさっと煮た料理。これは「シロウ君」の大好物なのだそうですが・・・。
何度も何度もこのコラムを読んでどんな料理なのか想像してみましたが、子どもの私には全く想像ができませんでした。
昭和の献立を紹介したような本を見てみると「モダンな洋食」みたいなものが沢山出てきます。当時としては最先端だったんでしょうが、ポテトサラダに缶詰ミカンが入ってたりして何だか昔風。カナッペとかフルーツポンチとか、響きすら懐かしいです。
もしかしたら「とんかつのミルクスープ」もそういった仲間なのかな?と思います。この記者さんも今はご高齢でしょうから。この記事についてWebで調べてみましたが、残念ながらそれらしきものはヒットしませんでした。
記憶の中にしかない食べもの、私の中には沢山ストックされています。
いつか作りたいと思っていますが、きっとまた違うものになるのでしょう。